新年の季語

「新年」の季語例句

 

新年・時候

 

【新年】

    暁闇に拳を固む年初かな      一 路 08

    常念岳の輝き見せて世紀明け    青 夢 01

    神杉や荒らぶる風に年立てる    泰 老 01

 

【初春】

    新春の箱根駈けたる襷かな      尚  02

    明けの春くっきりと見ゆ生駒山   千 種 97

        掛け軸は「白隠百壽」明の春    哲 庵  22

 

【去年】

    身の丈のくらし律儀に去年今年   多恵湖 07

    北斗の柄しづかに廻り去年今年    萩  06

    逝きし友癒えし友あり去年今年   綠 洗 06

    こぞことしころりころばぬこころがけ 豚 児06

    去年今年ああ棒が無い棒が無い   帰 路 04

    薬湯に始まる膳や去年今年     はいかー04

    われ思う故に我在り去年今年    キチロー01

    去年今年古きしがらみ置いてくる  トリス 00

    老パソコン買ひ換へそびれ去年今年 鈍 石 99

    一秒の挿し込まれたり去年今年   琢 星 96

    去年今年いろはにほへと餅を焼く  枯胞子 96

    ゆく雲やつづく雲あり去年今年   む三四 92

        「既読」の字確かめ合って去年今年  まるこ 22

     煩悩の鐘を遠くに去年今年     蛙 声 22

        吾に佳き句友と句会去年今年    美 優 22

        出来ぬこと増えゆく齢去年今年   長 作 22

        ポケットの一句大事に去年今年   伊々山 22

        生きてゐることのよろこび去年今年  稔  22

        諷詠を命の糧に去年今年      哲 菴 22 

 

【元日】

    元旦のこころの隅の武者震ひ    伊々山 07

    元日や一句にこめし誓いあり    一 路 02

    元朝やただ静けさの中にあり     淳  98

    元朝や空の青さをはるかにす    千 種 93

 

【三が日】

    忘られし鎮守に灯る三が日     トリス 06

    老漁夫の沖見つづける三が日    曳 月 04

 

【二日】

    二日はや妻と諍ふ孫のこと     トリス 05

 

【三日】

    富士仰ぐ三日の空の澄みにけり   む三四 01

 

【四日】

    ヘルパーと挨拶交はす四日かな   泰 老 07

    引潮のごとく子等去る四日かな    晴  02

 

【七日】

    市政便り配られて来る七日かな   一 歩 06

 

【松の内】

    羽根つきも凧揚げも見ず松七日   寿々女 06

    松の内過ぎて二人のレモンティ   茂 登 02

 

【松過ぎ】

    松過ぎやイヴモンタンの久しぶり  む三四 07

    松過ぎて門に馴染みのはぐれ犬   帰 路 06

    松過ぎの印度カレーの辛さかな    萩  05

    松過ぎて夫送り出す常の日々    小 春 03

    松すぎの煮物につかふ燗冷まし   みよ子 01

 

【小正月】

    母さんのウテナクリーム小正月   伸 茶 05

 

【女正月】

    紅のつく客の吸いがら女正月     萩  06

    海外へ妻一人発つ女正月      道 生 05

    実家とは昼寝するとこ女正月    亮 太 04

        古稀越へていよよ華やぐ女正月    美  優 22

 

 

 新年・天文

 

【初茜】

    パンドラの箱がいま開く初茜    帰 路 06

    しなやかに生きて余生の初茜    雀 句 01

    初茜決意の色と覚えけり      む三四 00

    鳩群れて翔び立つ彼方初茜     ふ さ 98

    初茜余生為すべきあれこれを    泰 老 98

 

【初明り】

    初明り帰省子の車白々と      一 歩 03

    初明り厨を覗く雀どち       ふ さ 02

    初明り古寺の鴟尾より流れ落つ   燎 岳 02

    家々の音立ち初むる初明かり    ありばば02

    山荘にトパーズ色の初明り     伸 茶 02

    神杉の梢に見ゆる初明り      千 種 02

    オホーツクに光の波や初夜明    道 生 02

 

【初日】

    初日影太平洋を走り来る      魔古都 05

    東雲の峰の起伏や初日影           蛙 声 22

    神杉の葉末に生れし初日かな    帰 路 03

    落暉いま明日の日の出は新世紀   みよ子 01

    二人して登る峠や初日出づ     哲 庵 01

    初日差し微塵きらめき漂ひぬ    鈍 石 00

    鳶の笛空まっさらに初日射し    ふ さ 00

    常になく掌の合ひたるも初日かな  泰 老 98

    生駒嶺の明けの大空初日出づ    千 種 94

 

【初空】

    光芒の海より走る初御空       尚  08

    初空に千歳添ひ来し夫婦杉     緑 洗 07

    産土神は遠くにありて初御空    佳都子 04

    初空に浮かぶ吉兆未雲       一 歩 03

    大漁旗靡く初空舟溜り       雀 句 98

    初空へ鞍馬の杉の迷ひなし     Cozy98

 

【初凪】

    初凪や寄り添ふやうに舟二艘    竹 生 10

 

【御降】

    御降りの晴れて虹立つめでたさよ  む三四 07

    御降や神殿深くお灯明       一 歩 03

 

【淑気】

    老翁の赤ら顔さへ淑気かな     空 豆 06

    拍手に一拍ごとの淑気かな     魔古都 06

    僧堂に魚鼓打つ音の淑気かな    キチロー00

    愛犬もすまして坐る淑気かな    鈍 石 99

    竹園の呼吸する音の淑気かな    千 種 98

    刷毛雲の茜に染まる淑気かな    む三四 98

    護摩経の伽藍に満つる淑気かな   雀 句 97

    飛び石に下駄の音ある淑気かな   帰 路 96

 

 

新年・地理

 

【初景色】

    少年の一人旅なる初山河      まるこ 08

 

【初富士】

    初富士や駿河の海の果てまろき   む三四 08

    初富士や平凡と言ふありがたさ   素 人 08

 

【初筑波】

    初筑波家族写真の肩越しに     哲 庵 03

 

【初比叡】

    東雲の峰の起伏や初比叡      蛙 声 07

 

 

新年・生活

 

【春着】

   あれこれと春着選んで暮れにけり  さくら  04

   はじらいてすぐには見せぬ春姿   みつる  97

 

【喰積】

   喰積の未だ箸つけぬ賑やかさ    豚 児  03

 

【屠蘇】

   老妻の遅れて坐る屠蘇の膳      正   08

   小盃の屠蘇もてあます母なりき   帰 路  07

   屠蘇祝ふ正座いつしか崩れをり    尚   05

   地球儀を日本で止めて屠蘇酌めり  曳 月  05

   節くれの指より受ける屠蘇一盞   魔古都  05

 

【年酒】

   ともかくも八十路めでたし年の酒   晴   05

   独酌の年酒となりし余生かな    む三四  00

   祖より継ぐ朱の盃で享く年の酒   千 種  90

 

【雑煮】

   ふるさとの雑煮守りて五十年    三 艘  07

   庭先の濃きみどり摘み雑煮かな   む三四  06

   ささやかに夫婦で祝ふ雑煮餅    雀 句  06

   親となり帰り来し子と雑煮かな    繁   03

   この味に慣れ五十年雑煮椀     いつお  03

   雑煮食う男ばかりの昼さがり    キチロー 00

   味噌味の雑煮にも馴れ孫五人    帰 路  98

   古き良き椀もて祝う雑煮かな    泰 老  98

 

【太箸】

   銘々に俳号記す祝箸        哲 庵  07

   未だ着かぬ子等の名記す祝箸     晴   03

 

【門松】

   刷物の門松を貼り父老ひぬ     帰 路  04

 

【注連飾】

   輪飾りを架けて胸張る神の犬    哲 庵  06

 

【鏡餅】

   相老いや掌に乗る鏡餅を買ひ    泰 老  04

   鏡餅左右控えしにらみ鯛      千 種  04

   大店(だな)は大店らしき鏡餅   雀 句  00

   鏡餅ゆたりと重き日暮かな     拓 青  92

   鏡餅還暦といふ年となり      む三四  92

 

【橙飾る】

   橙の少し傾く座りぐせ       亮 太  06

 

【掃初】

   掃初もまあるく掃いて四畳半    寿々女  07

 

【初暦】

   帰省子の予定書き込む初暦     茂 登  06

   新暦めくり老にもある未来     泰 老  03

   この日にと決めてしるせり初暦   む三四  98

 

【初湯】

   幼子と遊び遊ばれ初湯かな     小 春  06

   青空の玻璃に曇れる初湯かな    一 歩  05

   生きていることの目出度き初湯かな みつる  03

   初湯して古き想いをぬぎすてり   ワイン  02

 

【初電話】

   方言となりて弾める初電話      萩   08

   二人して耳付けて聞く初電話    千 曲  08

 

【泣初】

   泣初の妹あやす僕五歳       小 春  04

【初鏡】

   初鏡眉に白髪の二三本       哲 庵  06

   無位無官寝癖親爺似初鏡      魔古都  05

   遺伝子の笑窪の覗く初鏡     はいかー  04

   初鏡老いを感じつ帯結ぶ      みよ子  00

 

【初夢】

   初夢の覚めても残る母の声     はいかー 08

   初夢に逢ひたる人の覚へなく     萩   05

   初夢の身の軽がると歩みけり    きよし  03

   初夢にどうもどうもと不二の山   帰 路  03

   初夢や黄泉より帰りくる亡夫よ   胞 子  03

   初夢や笑い上戸の妻の顔      枯胞子  91

 

【寝正月】

   コロンボと寅さんがいて寝正月   川太郎  07

   留守番が家庭サービス寝正月    さかな  97

 

【年始】

   犬友と野路にて交す年の礼     きよし  03

   年を祝ぐ我等かたみに老いしかな   晴   03

   花活けて四角四面の賀客待つ    雀 句  02

   千年紀生き組にゐて御慶かな    泰 老  00

 

【御慶】

   福助のご内儀お多福てふ御慶    伸 茶  04

 

【年玉】

   背の丈を褒めては渡すお年玉    千 曲  07

   年老いし母よりそっとお年玉    ワイン  06

   今年より漢字名記すお年玉     多恵湖  06

   祖母いまだ不惑の孫にお年玉    道 生  06

   年玉や約しき頃の手の温み     魔古都  06

 

【賀状】

   飾りなき恩師の賀状筆太し     ミー太郎 08

   年賀状片便りとは知りつつも    曳 月  07

   飼犬の妍を競ひて賀状来る     緑 洗  06

   年賀状だけの付き合い半世紀    法 花  06

   癖のある添書き詰まる年賀状    千 曲  06

   逝きし人賀状に温み残しおり    一 路  04

   右上がり癖字の賀状今年絶ゆ    哲 庵  03

   乱れなき米寿の文字の賀状かな    晴   02

   Eメールパリの友より年賀状    みつる  00

   とだえいし友の賀状や無事とのみ  満 亭  98

   賀状来ぬ人を想ひて一人酒     拓 青  92

   零時過ぎ画面に受けし年賀状     淳   92

    芋版の寅の一文字年賀状      素 人    22

 

【初写真】

   初写真遺伝子しかと三世代     竹 生  07

 

【書初】

   パソコンに王羲之なぞる筆始    鈍 石  06

   墨匂ふ聖観音や筆始        北 砂  98

 

【初旅】

   六歳の話上手や旅はじめ      む三四  03

【初日記】

   のっけより疾病のこと初日記    きよし  01

   初日記数行で足る老の夢       晴   97

 

【稽古始】

   初稽古防具の歩む豆剣士      道 生  03

 

【舞初】

   舞初めの妹弟子は次の間に     橘 香  98

 

【初句会】

   初披講声改めし咳一つ       木 魚  07

   吟箋の披講朗々初句会       魔古都  07

   恋敵老いて句敵初句会       哲 庵  04

   ソプラノの披講きはだつ初句会   泰 老  99

   借景の琵琶湖かがやく初句会     晴   99

   初句会ことしの修羅の走り出す   雀 句  99

   初句会主宰の顔の輝けり      みつる  99

   身を縛ることなかりしや初句会   枯胞子  99

   相模灘光るを背なに初句会     む三四  99

   まっすぐに並ぶ惑星初句会     さかな  99

   子育てをしばし忘れて初句会    橘 香  99

 

【初漁】

   初漁の航跡やがて浦を占む     一 歩  05

 

【初市】

   振袖も一役買ひて初相場       繁   04

   まけっぷり互いに競ふ初市場     尚   04

   初市へ夜半の高速まっしぐら    曳 月  04

   本願寺塀から拝み初市へ      泰 老  04

   初市や通りに一つ老舗閉ず     緑 洗  04

 

【初売】

   初売りや五彩の声の飛び交へり   燎 岳  03

 

【歌留多】

   歌留多とる 末子に甘き読み手かな  まるこ 07

   子にあわせ熱戦つづく歌留多とり   千 種 03

   いろはにほへとへとになるかるた取り 紳 茶 03

 

【福笑い】

   仕上がりはピカソの女福笑ひ    素 人  07

   幼子をあやす顔して福笑い     小 春  02

 

【正月の凧】

   武者絵凧上がり行くごと勇むなり  美 子  04

 

【羽子板】

   羽子板の続かぬ音に安らげず    素 人  08

 

【破魔弓】

   干支未雑言祓う破魔矢かな     千 種  03

   病み妻に鈴聞かせばや破魔矢受く  泰 老  01

 

【万歳】

   万歳やうだつ上げたる家並なり   竹 生  10

   万歳や還暦古稀に喜寿傘寿     曳 月  10

 

【獅子舞】

   獅子舞を正座で待てる父母なりし   繁   08

   獅子舞と隣りあひたる厠かな    しんさ  08

   獅子舞の年季の入りし後ろ脚     萩   07

   獅子舞の赤子泣かせて帰りけり   蛙 声  07

   獅子舞の口から覗く別世界     法 花  07

   獅子舞に手を引かれたる迷子かな  のぶべい 07

      舞ひ終へて獅子舞の脚たばこ吸ふ   素  人    22

 

 

 新年・行事

 

【若水】

    若水を汲む音冴ゆる厨かな     竹 生 10

    みちのくの宿の若水厳しかり    曳 月 10

 

【成人の日】

    吾が村に今日は一人の新成人    帰 路 05

 

【出初】

    男には男の色気出初式       豚 児 03

 

【七種】

    七草の粥のなづなに蕾あり      萩  08

    とととんと耳より目覚め七日粥    正  08

    病床の母にひと草七日粥      法 花 07

    外つ国の菜も交じりて七日粥    哲 庵 04

    足るを知る老いの生活や薺粥     稔    22

    七草粥盛りこむ能登の蒔絵椀    美 優  22

    ルッコラの胡麻の香の立つ七日粥  山 女  22

    七草の三草賄ふ自家菜園      川太郎  22

 

【達磨市】

    網棚に鎮座してをり福達磨     竹 生 07

 

【松納】

    孫去りて一日の長き松納め     部 子 04

 

【初芝居】

    鬢付けの桟敷に匂ふ初芝居      尚  08

    老刀自の盛装きまる初芝居     小 耳 03

    柝の入りて胸とどろかす初芝居   千 種 00

 

【小豆粥】

    ふたりとも長寿の家系小豆粥     晴  03

【餅花】

    餅花の下を押されて浅草寺     川太郎 05

    餅花を飾りて京の喫茶店       晴  03

    帰らばや餅花咲ける囲炉裏端    哲 庵 03

    繭玉の跳ねつ転びつ風の径     鈍 石 99

 

【左義長】

    左義長の火立ち上りて御堂浮く タイガース野茂01

          コロナ禍を鎮め絶やせよどんど焼き 法 花  22  

 

【初詣】

 

    青竹の柄杓すがしき初詣       稔  07

    産土や訛の戻る初詣        魔古都 06

    見せ合ふて互ひに笑顔初みくじ   いつお 05

    初詣一兵ここにながらへて     雀 句 04

    初詣帰りは鈴の音とともに     む三四 03

    幼子の拍手優し初詣        帰 路 03

    初詣闇の溜りも人の波       曳 月 02

    ざわめきの空にぬけたる初社    ワイン 02

    初詣この頃見えぬ老貫主      トリス 01

    初詣燠の炎むらに手をかざす    みよ子 01

    伊達〆をねず鳴きさせて初詣    橘 香 96

    神宮の大絵馬に佇ち初詣      千 種 89

 

【七福神詣】

    六福で暮れし七福詣でかな     鈍 石 03

 

【十日戎】

    盛んなる焚火が馳走初戎       晴  03

 

【初天神】

    制服に別れが近き初天神      冗 六 07

 

【初護摩】

    初護摩の炎に揺らぐ菩薩像      尚  03

 

 

新年・動物

 

【初鶏】

    初鶏に覚めて余生の山河かな    泰 老 05

    初鶏や梢に残る明の星       素 人 05

    初鶏のひと声幸家幸々と      緑 洗 05

    初鶏や夫はとっくに起きてをり   小 春 05

    初鶏や外の厠へおとうとと    のぶべい 05

 

【初雀】

    産土の土啄ばめり初雀       一 歩 04

    種の起源知るよしもなし初雀    さかな 96

 

【初鴉】

    初鴉常の如くに常の屋根      いつお 03

    初鴉紺碧の空破りけり       む三四 96

 

 

新年・植物

 

【楪】

    出藍に遠き愚息も親子草      鈍 石 07

    楪や父知らぬ子の父となる     翔 氏 07

 

【歯朶】

    裏白の裏が表のめでたさよ      萩  05

    裏白やここにもおはす小さき神   伸 茶 05

    湯の街の路地裏黙し歯朶飾る    む三四 05

 

【福寿草】

    支えあう家族の絆福寿草      素 人 06

    福寿草杜氏部屋よりおけさ節   キチロー 01

    一輪は離れて開く福寿草     はいかー 00

 

【薺】

    穏やかに老いし二人の薺粥      尚  05

    長生きのあはあはしくも薺粥    泰 老 02

        足るを知る老いの生活や薺粥      稔   22